2011/06/02

ハリウッド版「戦争と平和」(キング・ヴィダー監督)

戦争と平和 [DVD]
戦争と平和 [DVD]
  • 発売元: パラマウント ジャパン
  • 発売日: 2006/04/21

キング・ヴィダー監督「戦争と平和」(1956年)を観ました。
原作はもちろん、レフ・トルストイの大長編『戦争と平和』です。
ピエール役をヘンリー・フォンダ、アンドレイ公爵役をメル・ファーラー、ナターシャ役をオードリー・ヘップバーンが演じています。
映画はナターシャを主人公に、アンドレイ公爵への初恋と婚約、放蕩貴族のアナトーリに誘惑され、駆落ちを計画するも失敗、婚約破棄の後に失意のナターシャを献身的に支える幼なじみのピエール、アンドレイ公爵の従軍と死などが、めまぐるしく描かれます。
ナポレオン戦争は、恋物語を演出する舞台装置といった程度。

原作は、ナポレオン戦争時代そのものがテーマの群像劇。
さまざまな登場人物の各々異なる物語が、時に交差したり、すれ違ったりしながら、同時に描かれています。
映画は、長い長い原作の中からナターシャのエピソードだけを取り出して、<少女の成長+恋愛物語>に仕立て直したようです。
もはや、原作のキャラクターを使った二次創作といった印象ですね。

原作と切り離して考えれば、オードリーはキュートだし、ヘンリー・フォンダは格良いし、帝政ロシアのコスチュームはいかにもだし、なかなか良かったです。

◇◇◇

映画のピエールは、スマートで知的な青年貴族でとても格好良いのですが、原作のイメージとは大違いです。
原作だと、アンドレイ公爵は大貴族で、才能があり、非常に格好良いキャラクターです。
一方、ピエールは同じ大貴族でも、肥満体で愛嬌があるキャラクターで、妻に浮気され放題だったり、熱心なフリーメーソンだったり。
ナターシャは、アンドレイ公爵やアナトーリ・クラーギンに心奪われるも、最終的にはピエールの真正直さと優しさにひかれ、真の愛に目覚めるという感じなのですが、映画ではアンドレイ公爵もピエールもどちらもイケメンなので、最終的にピエールと結婚するインパクトが弱いんですね~。
というか、こんなに格好良い幼なじみがいたら、ナターシャも真っ先に結婚するだろうと突っ込みたくなります。大貴族だし。
やっぱり、ピエールは不器用で格好悪くて、ふとっているけれど、内面の美しさ、誠実さがにじみでるキャストの方が良かったのに、と思いました。

トルストイの『戦争と平和』は、ソ連でも映画化されているそうです。ソ連版は原作に忠実らしいので、いつか見てみたいですね。


鑑賞日:2008年7月26日